特約とは
不動産の売買契約書には、どの取引でも共通する条項(標準の条項)が、あらかじめ印刷されています。これに加えて、その取引ならではの事情に合わせて、当事者が個別に合意した内容を書き足す部分が特約です。
たとえば、「売主が引渡しまでに境界標を設置する」「買主が住宅ローンの承認を得られなかったときは契約を解除できる」といった取り決めです。標準の条項と特約の内容が違うときは、一般に、特約が優先して扱われます。
特約が必要になる主な場面
- 面積・測量:公簿売買か実測売買か、測量を誰がするか
- 境界・越境:境界標の設置、越境の解消や覚書の引き継ぎ
- 建物・解体・残置物:更地渡し、古家の扱い、残された物の処分
- 土地の状態:地中埋設物、古井戸、擁壁など
- 契約不適合責任:期間の変更、免責
- 代金・融資・解除:手付金、融資特約、買い替え特約
- 権利の承継:賃借権、地役権、電柱の使用承諾など
特約の書き方の基本:「誰が・いつまでに・何を」
特約に入れる5つの要素
- 誰が:売主か、買主か
- 何を:具体的にする作業・負担する内容(「境界標を設置する」「建物を解体する」など)
- いつまでに:期限(日付、または「引渡しの日まで」)
- 費用:誰が負担するか
- できなかったとき:協議して期限を延ばす、それでも終わらなければ解除する、など
この5つのうち、1つでも欠けると、あとで「そこまでは決めていなかった」というもめごとになりかねません。特に、「できなかったとき」の扱いは、特約ごとに書き散らすと食い違いが生まれやすいため、全体に共通する条項で一度だけ決めておくと整理しやすくなります。
無効になりやすい特約・注意が必要な特約
- 売主が宅地建物取引業者の場合:宅地建物取引業法で、買主に不利になる特約が、原則として無効になる場面があります(契約不適合責任の期間、手付解除の制限、損害賠償額の予定など)。
- 消費者契約法・民法の強行規定に反する特約:消費者(買主)の利益を一方的に害する内容は、無効になるおそれがあります。
- あいまいな表現:「相当の期間」「適宜」「協議のうえ」だけでは、実際に何をすればよいか分からず、トラブルのもとになります。
- 重要事項説明書と矛盾する特約:説明した内容と、契約書の内容が食い違うと、説明義務の問題になります。
特約と重要事項説明書の関係
特約は「約束事」、重要事項説明書は「確認事」です。物件の現状や調査の結果(事実)は、重要事項説明書で説明し、そのうえで「誰が何をするか」という約束を特約に書く、というように分けて書くと、整理しやすく、食い違いも防げます。詳しくは、解説記事「特約と重要事項説明書の違い」をご覧ください。
下書きツールの使い方
「特約・重説 下書き」では、取引の条件をボタンで選ぶと、その組み合わせに応じた特約と、重要事項説明書の記載文の下書きが組み立てられます。文体は「しっかり(硬め)」と「やさしめ(簡潔)」から選べます。出てきた文は下書きです。物件の個別の事情に合わせて、担当の宅地建物取引士が確認し、必要に応じて弁護士などの専門家の意見も取り入れてください。